野球、サッカー、バスケット、バレーボール、ゴルフ、陸上など様々なスポーツがあり、プロ選手でなくてもパフォーマンス向上のために、ウエイトトレーニングを入れている方は多くいます。
しかし、ウエイトを取り入れていて、「カラダはムキムキになったり、高重量の負荷は持ち上げられるようになったけど、希望していた能力(スプリント力、ジャンプ力、投球速度、スイング飛距離など)はあまり変わらない…」ということはありませんか?
実は私もサッカーの現役時代、そしてプロのパーソナルトレーナーとしての初期の頃は同じようなことがありました。
そう…例えば、スクワットやデッドリフトが大幅(体重の2倍以上)に上げることができて、扱える負荷は上がったのにも関わらず、スプリント能力だけは上がらなかったんです。(コンタクトの強さ、ジャンプ力は向上しました)
当時の私の一番の武器は運動能力だったので、そこをもっと伸ばそうと思ってウエイトトレーニングに取り組み、一番の目標であったスプリント向上で結果が出ずに悩んでいた記憶は鮮明に残っています。
そして、超一流のスポーツ選手でも、この話は選手によって異なります。
ウエイトトレーニングでカラダを大きくしないイチロー選手、逆に大谷選手、柳田選手はガンガンにウエイトをかけたトレーニングをしてカラダを大きくしています。
「スポーツ能力向上は、そのスポーツを反復することが一番のパフォーマンスアップする」ということを言う専門家もいたり、逆に「ウエイトトレーニングをして、筋肉量を上げたほうが有利だ」という専門家もいます。
私自身、大学生から本格的に負荷をガンガンかけたウエイトトレーニングをし、さらにパーソナルトレーナーとしてもプロサッカー選手を始め、プロスポーツや一般のスポーツ愛好家のサポートをさせていただき、今は整理がついているので、今日はそのテーマを書いていきます。
【技術と特異性】
まず始めに、どんなスポーツでも技術が一番大切です。技術がないのに、ウエイトトレーニングをしても効果は出ないことが多く、逆につけた筋肉がそのスポーツに反映できずに重さとなって動きが鈍ることさえあります。
私自身が経験したことでは、ケガで2ヶ月練習にすら復帰できず、その間猛烈に1日2回にわけて全体で約3~4時間、ウエイトトレーニングとプールトレーニングをして、誰もがビックリするくらいのムキムキなカラダへの変化ができました。「よっしゃ!これで逆にパフォーマンスアップできる!」と思い、サッカーの練習に戻ったら…「重い…横へ動けない…走れない…」とカルチャーショックを受けました。元の動きに戻るまで1ヶ月ちょっとかかったのを覚えています。
私の場合、ついた筋肉をサッカーという競技で使えていなかったのです。ウエイトトレーニングでは負荷を重くすることばかりで、スピードやサッカーの動きの角度を考えていませんでした。ウエイトトレーニングで負荷を重くすると、スピードは落ちます。
実は、私と同じような経験をしている方はとても多いように思います。
ウエイトリフティング選手
ウエイトリフティングとは、その名の通り、ウエイトを素早く頭上に引き上げるスポーツのことで、有名な選手では三宅宏美選手がいます。
このウエイトリフティング選手なのですが、メチャクチャジャンプ力あります。女性でも垂直跳び80cmオーバーだったりするんです。
しかも…メチャクチャスプリント能力もあるんですよ。
以前テレビで、100m日本女子チャンピオンの福島選手、レスリング元世界チャンピオンの吉田選手、そした三宅選手の3名が10mスプリントで勝負していました。
結果は…三宅選手が勝っていました。それも10mなのに圧勝だったのには私も驚きでした。
スタートダッシュの得意な短距離専門でその練習を主におこなっている福島選手より速かったんですから。10mであればスプリントの技術要素が100mよりも小さくなるとはいえ、圧勝にはビックリしました。
三宅選手は、ウエイトリフティングの選手なので、スクワットやデッドリフト、そしたその競技のスナッチやクリーンのトレーニングが主で、短距離のトレーニングはほぼしてないはずです。
ここで言いたいのは、ウエイトトレーニング自体は、必ずしも悪いものではないということなんです。
加齢による問題
技術を追求して、そのスポーツをどんなに反復しても、加齢に伴いパフォーマンスは低下していくものです。
これはどんなアスリートを見ても分かるでしょう。
50歳で有名スポーツ競技で世界チャンピオンは聞いたことがありません。
そのパフォーマンス低下に関わってくるのは、動体視力などもありますが、筋肉量そのものの低下が上げられます。
筋肉量を上げるためには、ウエイトトレーニングはとても有効となります。ボディビルダーは、筋肉量、筋肉がたくさんついた中でのバランスが大切です。ビルダーは、筋肉量を上げることに特化しているのですが、ウエイトトレーニングをメインにしており、走ったりスイングして筋肉をつけることはしません。
逆に、走ったり、スイングを反復することは、筋肉に対してカタボリック、異化作用になり、筋肉量が減ることもあります。
【私の指導経験】
ここまで書くと、もうお分かりですよね。
私の指導では、スポーツ選手にもウエイトトレーニングを用いています。しかし、それは技術練習ができる状態、もしくはそのスポーツに近いトレーニング環境があるということを前提におこないます。
そして、ウエイトトレーニングで、大幅に筋肉量を上げるというよりは、スクワットやデッドリフトなどの基礎的なトレーニングで少しずつ筋肉量を上げつつ、そのスポーツに特異的なウエイトトレーニングを入れていきます。
実際にそのようにアプローチすることで、50m、100mのタイム、ジャンプ力などの数値はもちろん、選手から「競技パフォーマンス
も以前より上がった」「当たり負けしなくなった」というお声をいただいております。ちなみに「カラダが重くなった」「動きにくい」などのお声は聞いていません。(私の場合は、ある程度の期間でフィードバックするため、選手は本音を言ってくれると信じています)
例えば、ラグビーのFWの選手ではスクラムを組むことが多いですよね。
相手もある程度の体重があり、動きは低速です。このような場合には、負荷をかけたスクワットは効果的なトレーニングの1つとなります。そしてスクラムのように前傾姿勢で力を入れさせるウエイトトレーニングを入れたり、一瞬グッと力を入れることが多いため、パワークリーンもオススメのトレーニングとなります。
逆にサッカーのサイドバックの選手では、スプリント能力が必要になります。
スプリント技術の中で筋肉が使えるように、負荷をかけたスクワットなどのウエイトトレーニングの量は増やし過ぎず、ウォーキングランジや高速のスナッチやクリーン、その場で高速足入れ替えトレーニングなどをバランスよく設置することをオススメします。
環境的にあまりないですが、1セットスクワットした後、1本数10mでもいいからダッシュすると、スクワットした筋肉をダッシュの動きに神経系促進できオススメです。
要約すると、賛否両論あるかと思いますが、私個人的には技術が大前提!ウエイトトレーニングは、技術が安定している選手では取り入れたほうがいいと思います。
そのウエイトトレーニングの中身、負荷を重視するスポーツ、負荷は適度にしスピード重視にするスポーツがあり、そのスポーツの内容に合わせることが大切です。
そして、どんなスポーツでも特異的なトレーニングを意識することは欠かせません。
走ることを上げるならば、走る動きに近いウエイトトレーニングをするなど、全身を協調させるウエイトトレーニングもあります。
その他、本日は割愛しますが、アスリートにおいてはシーズン中、直前、オフ期でトレーニングプログラムを変える場合と、1年の中でそんなに大きく変化させないパターンがあります。
これについてはまた書いていきたいと思います。
ウエイトトレーニングをバランスよく入れていくことで、スポーツパフォーマンスはもちろん、加齢の影響を最小限にして、長くスポーツが楽しめるかと思います。
くびれ美人代表 畑紀寿